パラグラフテキスト |
貝塚市立第五中学校バスケットボール部。練習は週に5日、部員は10人。顧問は社会科の教師・溝口貴昭さん。しかし溝口さん自身が練習の組み立てを作ってはいない。代わりにメニューを作り生徒を指導するのは吉岡悠人さん。大学2年生だ。保健体育の教員を目指す勉強をしていてバスケットボールの知識や経験が豊富だ。その指導には学んできた知識やノウハウが詰め込まれている。重視したのが体作り。体を左右に動かしながら足を踏み出す練習は上半身がぶれていてもバランスを保つためだ。意識的に片足に重心をかける練習。試合では片足でどれだけ耐えられるかが重要。生徒たちが初めて知る練習がいくつもあった。吉岡さんは「ずっと体育の教員になりたかったが、実際に学校の中に入って生徒と関わるので貴重な体験だと思う。」と話す。この中学校では運動部全てで大学生が指導している。バスケットボール部の場合、顧問の顧問の溝口さんは進路指導など様々な校務で部活動になかなか関われない。もう一人の顧問はバスケットボールの経験がなかった。2年前、全国の中学校を対象に行われた調査結果では部活動の課題で最も多かったのが校務が忙しく指導ができないこと。その次が教師自身の実技指導の力不足だった。悩んでいた中学校に学生の紹介を始めたのが大阪体育大学。学校教育学が専門の中尾教授はまず子どもたちの指導で必要なことを教えるセミナーを開催してきた。セミナーではスポーツの基礎知識や指導するときの心構え、関係者との関わり方を教えた。そのうえで中学校から要望が来るとセミナーを履修した学生から条件にあう人を紹介することを続けてきた。これまで62人が教えている。セミナーに参加した学生の多くが吉岡さんと同様、教員志望だった。指導を受けて生徒たちは自分たちでも技術を追求し始めた。吉岡さんが準備した動画で体の使い方を覚える。みたあとは自分の動きを撮影。お手本と自分を見比べる。さらに生徒同士で分析も。1人の生徒はお手本から自分は手の動きが問題とわかった。指導を始めて2ヶ月。吉岡さんは生徒の技術の向上を実感している。こうした教え方をきちんと学んだ人が中学校の部活動を支える仕組みづくりがいま各地で必要かもしれない。 |