パラグラフテキスト |
「時代の意志を代弁する作品」とはどのようなものなのか。ヤノベ作品の1つである「サン・チャイルド」は現在、大阪の南茨木駅前に設置されているが、この作品が生まれた背景をうかがうと「作られた時代が2011年の東日本大震災のとき。震災のときは原発事故もあったし、本当に日本の半分がなくなっちゃうんじゃないかっていう不安に苛まれてみんなの心が落ちていた。芸術というのはそういう時にみんなの精神の栄養になるようなものを供給するのが役割なんじゃないか、明るい未来を想像できる傷だらけでも立ち上がるたくましい子どもの像をつくろうとして作った。その作品はその次代にしか作れないし、不安が立ち込める中、芸術で光を与えようという作品」などと話した。初期段階の「サン・チャイルド」のスケッチでは、実物と比較して少し目が小さく、右手に持っているものも異なる。第二段階ではかなり近づいたが、よく見ると顔の向きが反対なのが分かる。実は「サン・チャイルド」が向いているのは震災が起きた東の空で、今も見守っている。こうした細部へのこだわりが作品の持つ意味を大きく変えている。手に太陽を持っている理由は、1986年にチョルノービリ原子力発電所の爆発事故が発生し、ヤノベさんは1997年に現地を訪問した。その時に誰もいない保育園に太陽が飾ってあり、絶望的な状況の中から希望を見出す太陽の絵をモチーフにしたため。社会の状況やその時代の人々の感情に寄り添う姿勢がヤノベ作品ならではのパワーを生み出している。数々の作品がどのように作られているのか、今回は特別に作業工程を見せてもらった。包丁などに使われる錆びにくい金属素材である「ステンレススチール」を使用し、1枚ずつ手作りしている。実際に硬い金属の板をカットするところを見せてもらった。 |