パラグラフテキスト |
同時多発テロ事件の直後遺族や被害者への補償金を支払うための国家事業が動き出した。その責任者がケネス・ファインバーグさん。裁判外での紛争解決などで定評のある弁護士であった。映画「ワース 命の値段」でえがかれているのは補償金の額を決める難しさ。映画ではファインバーグさんをモデルにした主人公が犠牲者の年収から金額を設定する。しかし遺族から大きな反発を受けた。事件から9ヶ月後ファインバーグさんは妻を亡くしたウルフさんに出会う。ウルフさんは命に重みを収入で算出する方法に違和感を感じていた。ウルフさんとの出会いをきっかけにファインバーグさんは遺族の感情を受け止める重要性に気づき1人1人の遺族と会うことにした。面会した人たちは必死になって大切な人を亡くした苦しみを打ち明けたという。実際の面会はのべ900回に及んだ。この過程でファインバーグさんの姿勢は遺族に寄り添ったものに変わっていったという。そしてファインバーグさんは年収による補償金とは別に遺族への精神的な苦しみに対し1人5万ドルから一律10万ドルとした。最終的に97%の対象者に支払われ事業が終了した。ファインバーグさんは計算式ではなく人との対話を繰り返すことで補償金の内容を変化させたことが大切だったという。 |